虚無僧尺八家による身体論

 尺八という楽器は世界でも異例の楽器だそうです。
管弦楽器の中でも最も効率が悪い部類のエアリード楽器、そしてその中でも更に最も非効率的な楽器、世界で最も大量の息を必要とする楽器、との事です。
それゆえ呼吸法がとっても重要、著者は「密息」という日本古来の呼吸法を紹介、様々な視点から評価されています。


 胸式呼吸でもなく、腹式呼吸でもない「密息」。
腹筋や胸筋といった体の表面の筋肉を使って呼吸するのではなく、骨盤を後傾させ、腹を膨らませたまま息を吐くことにより、横隔膜だけを動かして呼吸するといいます。
ちょっと試してみると、なるほど下腹部や脚、足裏を意識しやすく、上半身の力が抜けやすいような気もします。


 単に呼吸法の紹介のみでなく、日本古来の文化、音楽、言語などとの絡みも記されています。
日本文化と欧米文化、そのルーツの違い等、知識が広がる、体感・共感できる1冊でした。

この本の著者 中村明一さんという方、一度は会社員として就職された後、やはり本当にやりたいことを仕事にしたいという想いから尺八家に転進され、29歳の時にはあの有名なバークリー音楽大学にまで留学されて勉強されたのだそうです。
尺八かついで米国留学.. 凄い方ですなと関心しました。